2008年12月7日日曜日

WTO農産物重要品目 (農業自由化交渉は?、米はどうなるのか?)

 世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉、ドーハラウンドの閣僚級会合が7月末に決裂していたが。
(時事通信) 2008年12月7日(日)10:30
 【ジュネーブ6日時事】世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の農業、鉱工業両分野の交渉議長は6日、関税引き下げなど自由化ルールを盛り込んだ市場開放の大枠(モダリティー)合意案を公表した。農業分野は、関税引き下げ幅を例外的に低く抑えられる「重要品目」の対象数を、全品目の最大6%とするなど7月の閣僚会合での議論の流れをおおむね踏襲。最大8%の品目確保を目指す日本にとって厳しい内容となった。
日本の重要品目⇒米、小麦、乳製品、砂糖、サトウキビ、
 米の重要品目入りの大義名分は、WTOが重要品目に対して認める例外的に高い関税率を維持することによって、海外産の廉価なコメの流入を防ぐということである。一方、減反のそれは、米の価格を高く維持することで、生産者の生活の安定を図ることだ。消費者負担の上に成り立つこの防御一辺倒の姿勢こそ、日本の農政の特徴である。
 しかし、今やその大義名分はいずれも成り立たない。
 米の60キログラム当たり2万円という関税は、今の国内米価1万4000円より高いので、輸入米価格が0円でも輸入されない。また、海外産の安い米と言うが、それは昔の話だ。日本米に品質的に近い中国産米の日本への輸入価格は1万円にまで上昇している。いまや4000円の関税さえあれば十分だ。要するに、国内米の保護のために重要品目入りが不可欠というロジックはすでに正しくないのだ。
 次に、生産調整だが、減反面積が110万ヘクタールとすでに国内の水田全体の4割超に達しているのに、米価の下落は続いている。生産調整には麦や大豆などに転作させる目的で補助金が支払われているが、国家の財政事情などから、年々減額されており、生産者からみれば、この“生産カルテル”への参加メリットは減退している。
 政府が昨年生産調整を農協に任せたことから減反面積目標が達成できなくなり米価が低落したため、今年度は農林水産省と農協ほかの関係団体が連判状まで交わして10万ヘクタールの目標上乗せと官民上げての取組みの強化をおこなったが、上乗せ分の7割しか達成できていない。
ある農業研究所の試算では、過度の関税保護と生産調整を撤廃すれば、価格は60キログラム当たり約9500円に低下し、需給は現在の900万トンから1000万トン以上に拡大する。
食管制度以来、米価引き下げに対しては農業団体から農業依存度の高い主業農家が困るという反論がなされてきたが、そうであるならば、現在の1万4000円と9500円の差の8割程度を、主業農家に補償すればよい。
 流通量700万トンのうち主業農家のシェアは4割であるから、約1600億円の財政負担ですむ。これは、生産カルテルに参加させるために農家に支払っている補助金と同額だ。
 ちなみに、価格を引き下げて財政による直接支払で補償するというこのやり方は、ウルグアイ・ラウンドで過剰農産物処理のために必要だった輸出補助金の削減についてアメリカに譲歩するためにEUがとった戦略でもある。高い価格を下げれば過剰が少なくなるからだ。
 土日しか農業に従事しない兼業農家も、主業農家に農地を貸せば現在の10万円程度の農業所得を上回る地代収入を得ることができる。主業農家の規模が拡大してコストが下がれば、主業農家の所得は上昇するし、兼業農家が受け取る地代も増えるだろう。
 メリットはまだある。価格が低下すれば、国際市場での競争力が増すわけで、輸出という攻めの農業が可能になる。日本の人口は減少するが、世界の人口は増加する。しかもアジアには所得増加にも裏打ちされた拡大する市場がある。
日本を代表する自動車や電機産業は、海外に目を向けることで発展してきた。農業も防御一辺倒から国際市場の開拓に転じるのだ。これが自国の食糧安保だけでなく、食糧難時代の国際貢献の道でもある。
 国内農業の疲弊度合いを考えると、今がぎりぎりのチャンスだ。日本はこの与えられた最後のチャンスを逃してはならない。

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